ヤマで死なないサバイバルエッセンス / 2章:天候とリスク管理

2-4. 標高と天気の変化の関係

 MA-SAN
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「下界は晴れてるし、問題ないだろう」
そう思って登り始めた南アルプスの山で、私は山頂直下で吹雪に遭いました。
急な冷え込み、濡れた服、見えない視界――それは、標高を甘く見た代償でした。

この記事では、自分自身の失敗経験を踏まえながら、標高が変わることで天気がどう変わるのか
そしてどのような備えが必要なのかを、現場目線でお伝えしていきます。

事例:標高を甘く見た結果、吹雪の中で動けなくなった

南アルプス・仙丈ヶ岳を登ったときのこと。
出発地点の標高1500mでは晴れていて、「これなら問題なさそうだ」と軽装で登山を開始。

しかし、標高が2000mを超えたあたりから徐々に風が強くなり、視界が悪化。


雷鳥が現れたら要注意。かわいい!
とか言っている場合ではない。

やがて雲の中に入ったような感覚になり、山頂直下では完全に吹雪に変わった。

天気予報は「曇りのち晴れ」ところが蓋を開けてみれば、突然の30分の吹雪。シェルターを持っていたからよかったものの、シェルターから顔を出すと、そこは膝上までの雪。

ファイントラック(finetrack) FAG0121 ピコシェルター OG
ピコシェルター

油断していたわけではないが、標高が上がるだけでここまで天候が急変するのかと、身をもって学んだ。

低山感覚で登ると命取りになる――その日、防寒着をしっかり持っていたため、無事に下山できたが、あの寒さと風の強さは今でも忘れられない。

標高が100m上がるごとに気温は0.6℃下がる

これは登山者の常識で、体感してはじめて実感できる知識。
たとえば気温20℃の街から標高2500mの山に登ると、気温は約15℃下がって5℃になる計算になる。
そこに風が吹けば体感温度はさらに低下し、5月でも霜が降り、雨が雪に変わることもある。

平地の気温だけで服装を選ぶと、山頂で凍えることになる。
標高に応じた気温の変化を前提に装備を考えることが、生死を分けるポイントになる。

天気予報は標高別に見る

スマートフォンで見られる天気予報アプリの多くは、ふもとの街の天気しか表示していない。
それを信じて登ってしまい、山の上で驚く――これは初心者にありがちなミス。

だからこそ使ってほしいのが、山専門の天気予報「ヤマテン」

山の天気予報

標高別の気温、風速、風向、雲の流れまで表示されるため、山の判断材料として非常に信頼できる。
天気図も読めない初心者こそ、正確な情報にアクセスしてほしい。

標高が高くなるほど天気は不安定になる

高山帯では、雲の発生や風の変化が激しい。
特に午前中は晴れていても、午後には雲が湧き、雷雨に発展することが多い。
だからこそ「早出早着」が鉄則と言われる。

標高が上がるにつれて、風速も増す。
風速10mを超えると立っているのもやっとで、稜線では転倒や滑落のリスクが一気に上がる。
「標高が上がる=難易度も一段上がる」という意識が必要だ。

まとめ:標高に応じた「もう一枚」を持っていこう

低山と同じ気持ちで高山に登ってはいけない。
標高による気温低下、天気の変化、風の強さ――どれも装備と行動判断を左右する要素だ。

「今は晴れているから大丈夫」ではなく、「この先、標高が上がったらどうなるか?」を想像して行動すること。
その1枚の防寒着、その1つの情報が、あなたの命を守ってくれるかもしれない。

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