ヤマで死なないサバイバルエッセンス / 2章:天候とリスク管理

2-3. 雷の危険と行動判断

 MA-SAN
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「稲光が見えてから対処」では遅すぎる。
登山中の雷は、その破壊力と突発性から最も命に直結する自然現象の一つです。
特に高山域では、逃げ場も隠れ場もなく、判断の遅れが命取りになります。

富士山で経験した「雷の急接近」

これは私自身が体験した事例です。

高地順応のトレーニングの一環で富士山を登っていたとき、天気予報では午後から雷雨の可能性。
それを見越して早朝に登り始め、昼前には下山を開始しました。
ところが八合目を過ぎたあたりで、急に風が変わり、遠くから低く響く音が聞こえ始めたのです。

「間に合わなかったか…」

そう思った矢先、あっという間に空が暗転。
耳をつんざくような雷鳴と豪雨。
登山道は濁流になり、雷雲の中にいるような感覚に襲われました。

幸いにも、比較的低い位置にいたため落雷には遭いませんでしたが、「雷は本当に急に来る」ということを身をもって実感した出来事でした。

山の雷の恐ろしさ

雷は午後に発生しやすく、晴れていても雲の裏側で育っていることがあります。

特に夏山では、「晴れていたのに、30分後には雷」というのは珍しくありません。

また、山頂や稜線など周囲より高い場所は“避雷針”そのもの

金属類を多く身に着けている登山者は、誘雷のリスクも高く、危険性は街中の比ではありません。

雷の前兆と“撤退”のタイミング

以下のような兆候が見えたら、迷わず下山や避難を判断すべきです。

  • 積乱雲(入道雲)が近づいてきた
  • ゴロゴロという低い音が聞こえる
  • 風向きが急に変わった、冷たい風が吹き始めた
  • 雨粒が急に大きくなった

「音が聞こえた時点で撤退」が鉄則です。
雷は10km先からでも落ちることがあります。「まだ遠い」と油断している間に、突然の落雷に見舞われる可能性があります。

どうしても雷に遭ったら

雷から逃げ切れなかった場合、以下の行動で被害を最小限に抑えることができます。

  • 高所・稜線・ピーク・岩の上から離れる(とにかく低い位置へ)
  • ザックやストックなど金属類を少し離れた場所に置く
  • 両足を揃えてしゃがみ、地面との接地面積を小さくする
  • 大きな木の下には入らない(雷が伝導する可能性)

もちろん、これらはあくまで「最終手段」。
最も大事なのは、“遭遇する前に離れる”判断です。

まとめ:「見えてからでは遅い」

雷は「晴れているうちに逃げろ」「音がしたら即撤退」が命を守る行動です。
山では逃げ場がなく、体も濡れていて導電性が高くなり、落ちたら即、命に関わります。

天気予報で「雷」の文字を見たら、その日は登山を見送るか、午前中に行動を終える。
命あっての登山です。

雷をなめず、確実に避ける行動を、心がけてください。

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