
登山装備の中でも「手袋」は、つい後回しにされがちな存在かもしれません。
「寒くなければいらない」「夏山だし不要でしょ」──そんな風に思っていませんか?
けれど私は、手袋をしていなかったことで“本当に動けなくなった”登山者を救助したことがあります。
また自分自身も、山で岩に手をついた際に指先を切ってしまい、指紋認証操作ができなくなった経験があります。
この記事では、登山における「手袋」の本当の役割を掘り下げます。
それは防寒具ではなく、“行動不能を防ぐための命の装備”という視点です。

finetrackなものは間違いなくおすすめだが、、、。

こんな軍手でも十分だ。
両手を同時に負傷し、何もできなくなった登山者
ある40代の男性登山者が、晩秋の低山を一人で登っていたときの話です。
登山道に出ていた露岩で滑り、転倒。両手を地面についた拍子に、左右の手のひらに切り傷と擦過傷を負ってしまいました。
見た目には軽傷でも、問題はそのあとでした。ザックのジッパーを開ける、地図を広げる、行動食を取り出す──あらゆる作業が激痛でできないのです。
スマホの操作すらうまくいかず、彼は「ここで動けなくなるかもしれない」という恐怖に襲われました。
結局、携帯電話の音声通話で救助要請を行い事なきを得ましたが、もしこのとき厚手のグローブと言わないまでも軍手のひとつでもしていたら、防げた怪我だったかもしれません。

「冬じゃないから要らない」は大きな間違い
手袋は「冬用の防寒具」と捉えられがちです。しかしそれは、登山における手袋の“本当の役割”を見落としています。
登山において手袋が果たすべき最大の機能は、防寒ではなく「手を守る」という点にあります。
転倒時の衝撃吸収、ザレ場での摩擦保護、岩場の掴み動作──登山中の両手は、常にリスクに晒されているのです。
特にソロ登山や悪路、雨天時などでは、両手が自由に動かせるかどうかがそのまま「行動不能=遭難」に直結します。
登山中に“手”を使う場面は、想像以上に多い
- 岩場・急登・鎖場で、岩やロープを掴む
- 濡れた木の根・枝をつかんでバランスを取る
- 転倒時にとっさに地面へ手をつく
- 地図、GPS、スマホ、行動食の操作
- 緊急時のファーストエイドや救助要請
これらすべてに共通するのが「手が使えないと何もできない」という現実。
特に両手同時の負傷は、想像以上に大きなダメージとなり、自力下山の妨げになります。
夏でも使える“プロテクション手袋”を
「手袋=防寒手袋」と思っている人は多いですが、春〜秋でも使用できる薄手で丈夫なグローブが登山用品店では多く販売されています。
ポイントは「防風・耐摩耗性・通気性・操作性」のバランスです。

レースではこれ!!
おすすめするのは以下のようなタイプ:
- メッシュ×補強素材のハイブリッドグローブ
- タッチパネル対応でスマホ操作が可能
- 手のひらに滑り止め加工があり、岩場でも安心
- 軽量・コンパクトで収納しやすい
トレイルランナー向けにも、薄手で吸汗速乾性のある手袋が多く販売されています。
「汗を吸うから使いたくない」ではなく、「汗を吸ってでも手を守る価値がある」という意識を持つことが大切です。

春夏なら指先が出ているものも使いやすいが、安全との天秤になる。
防寒手袋とプロテクション手袋は“別物”として用意を
冬山や晩秋、春先の高山では、低体温症リスクを防ぐための保温用手袋も必須になります。
ただし、行動中に使うグローブとは別に、「予備・保温用」としてザックに入れておくのが理想です。
予備手袋は、濡れたときの交換用としても有効です。
手が濡れて体温が奪われると、低体温症が一気に進行します。
まとめ:手袋は、“歩ける手”を維持するための命綱
登山中に使うすべての道具──ザック、ストック、食料、GPS、ファーストエイド──それらは「手を使って初めて意味を持つ」ものです。
だからこそ、「手を守ること」こそが命を守ることにつながるのです。
防寒だけじゃない、滑り止めだけじゃない。
手袋は、あなたの「動ける力」「帰れる力」を守る装備です。